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K812レビュー - 高橋敦氏

2014年5月23日

オーディオ系ライター「高橋敦」が語るK812の魅力

オーディオ機器に関する記事執筆を中心に活動する高橋敦(たかはしあつし)氏。幅広い趣味から得た豊富な知識を元に語られる独自の評論は、オーディオ愛好家はもちろん初心者にも分かりやすいと高い評価を得ています。

その高橋氏に、AKGが満を持して送り出したモニタリング用ヘッドホンのフラッグシップ・モデル「K812」を試していただき、その感想をお伺いしました。

高橋 敦氏
高橋敦

Twitter: https://twitter.com/ats_takahashi
※別サイトに移動します。

 


このモデルの概要や意義を繰り返す必要はないだろう。ここでは一曲を聴き込んでの印象を書かせてもらう。Daft Punk「Random Access Memories」収録の「Get Lucky」だ。完璧な演奏をアナログとデジタルを効果的に併用して録音し、それがハイレゾで配信されている。このモデルの実力を見極めるのに不足ない音源だ。

まず感じるのは、空間のスペース、余白の豊かさだ。開放型ヘッドホンは一般的に、その点に優位がある。しかしこのモデルのそれは一般的なというレベルではない。豊かに確保された余白には温かな透明感がある。余白によってそれぞれの音の明瞭さが際立ち、それを背景にして響きの成分も美しい。それが希有なレベルで実現されている。

音の切れも秀逸だ。音の頭の立ち上がりと収まっていく立ち下がりが、至って普通に決まっている。「普通に」とは、鈍くも鋭くもせずそのままにということだ。ギターのカッティングのアタックは、パキッと綺麗に立ち上がって抜けている。音の出方に何のストレスも感じられない。多弦ベースの低い音域の立ち上がりと立ち下がりを綺麗に再現するのは、オーディオ機器にとって特に難しい。しかしこのヘッドホンはそれも、やはり希有なレベルで実現。おかげで演奏タイミングの間が正確に伝わってくる。

優れたミュージシャンは余白や間を巧みに操り、空間とグルーブを生み出す。この作品に参加したのはまさに突出して優れたミュージシャンたちだ。ダフト・パンクの二人はそれを求めて彼らを集め、それを生かして制作を進めたものと思う。
ならばその余白や間を再現できる再生機器で聴いてこそ、その真価を体験できる。または逆に、それを再現できるものこそが優秀な再生機器だ。
このヘッドホンはその領域に余裕で達している。もちろん他の要素もハイレベル。もっと聴き込めばもっと多くを発見できるだろう。そう思わせてくれるヘッドホンだ。


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