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JBL PROFESSIONAL Intellivox ビーム・ステアリング・スピーカーの可能性を探る②


 
 ■目次
 >>なぜ音の方向を動かす必要があるの?…[前編] 
 >>Intellivoxとは…[中編] 
 >>実際の設置例…[後編] 

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Intellivoxとは
 「Intellivox」の原型となる製品は、2013年10月に「JBL PROFESSIONAL」の傘下に入った「Duran Audio」が開発・製造していました。「Duran Audio」は1981年にオランダで設立され、1994年に世界初となるDSPによる指向性制御技術を搭載したサウンドシステムを「アムステルダム」のスキポール空港に導入しています。以来、同社はスピーカーDSP制御技術のパイオニアとしてテクノロジーに磨きを掛けてきました。「JBL PROFESSIONAL」は、自らが培ってきたスピーカー設計のノウハウと組み合わせてより精度の高いビームコントロールを行なうため、「Duran Audio」をグループに迎え入れました。

 現在日本では、前出のビーム・ステアリング技術である「DDC(Digital Directivity Control)」を搭載した「Ivx-DC Series」、さらにこれを発展させたビーム・シェイピング技術の「DDS(Digital Directivity Synthesis)」を搭載した「Ivx-DS Series」と「Ivx-DSX Series」の、3つのシリーズが販売されています。また、それぞれのシリーズには音の到達距離が異なる複数のモデルが用意されており、奥行 10〜70mまでの様々な規模の空間に対応しています。さらに雨や直射日光に対して充分な耐久性が考慮された屋外設置可能な高耐候性モデルやビーム・シェイピングが可能な専用サブウーファーも近日発売予定とのことです。

 この他の特徴としては、2系統ある入力の扱いを3つのモードの中から選択できます。1つは「モノミックス」モード。LとR、もしくは音楽と案内放送等のミックスです。2つ目は「レベルの大きい又は小さい方の信号優先」モード。3つ目は「パイロット信号優先」モードです。パイロット信号が含まれる方の入力がONになります。このパイロット信号には19kHzが使われます。また、スピーカーの前面からすべてのメンテナンスが行なえるのは、想定しうるこの機種の設置状況を考えると重要なポイントですね。


Intellivoxの設定方法
  このスピーカーの設定は専用コントロールソフトである「Win Control」を用います。設定の手順は下の図をご覧ください。


Intellivoxの設定手順

 最初に行なう作業は、設置する場所の形状入力です。こういった手順は最近では必須項目となってきた感がありますね。「Intellivox」の場合3次元的に入力しますが、対象とする面だけの入力でOKです。対象とする面とは客席部分以外に後壁面やバルコニーの張り出し部分等の音を制御したい面も含みます。何もしなくて良い面は入力する必要はありません。

 次に、必要な面に対して「ウェイト」と「音圧」を指定します。「ウェイト」とはその面の重要度で0〜10の値で設定されます。これらを入力して「Intellivox」の計算を始めます。

 この時に、例えば客席のウェイトを10として音圧を90dB、後壁は同じくウェイトを10で音圧を0dBとすれば、後壁には極力音が届かない設定になりますし、後壁のウェイトを10で客席を5とすれば、客席よりも後壁の音圧を抑える状態が優先されます。また、客席を前・中・後に分けて各音圧を同じにしてやれば、それぞれの面に対して均等な音が届く設定とすることができますし、ウェイトを併用すればどこの音圧レベルの正確さを優先するかを設定できます。この時の設定面数には特に制限はありません。
 
 このようにして作成されたデータはPCから専用のインターフェースでUSBからRS-485に変換して各スピーカーに伝送されます。ここで使用されるRS-485は5ピンのキャノンタイプ・コネクターです。また各端末へはデイジーチェーン接続が可能です。他にこのコントロールソフトからは、音処理用DSPとは別の監視専用プロセッサーを用いて内部の温度や状態を常に把握できるため、信頼性の高い監視が可能です。

実測結果
 日本では2015年3月末に発表されたばかりの「Intellivox」。その素性を改めて検証するために、都内にあるホールをお借りして電気音響的な測定を行なう機会を得ました。測定に用いた機種は中型機の「Ivx-DSX280」で、特に着目したのは同機種を使用することによる音の反響状態の変化でした。
 
測定ソフト「TEF25」を含め三村氏が持ち込んだ測定用の機材


 
測定マイクは決められたポイントに厳密に移動。
高さもその都度計り、正確なデータ収集が行なわれた
 
ビーム・ステアリング・スピーカーの実力を知るには
高い位置での測定も大事な要素

 下の図をご覧ください。これは音圧レベル分布といって「2kHzのバンドパスノイズ音が客席内でどのように分布しているか」を示すもので、偏差が少ないほど客席による変化が少ないことになります。この中で、Aは全体をカバーするパターン、Bは中通路までをカバーするパターンですが、Bパターンでは中通路より後方のレベルが大きく下がっていることが分かります。偏差で見るとAパターンは全客席を通して4.1dBですが、Bパターンでは11.3dBと後壁のレベルが下がっている分だけ大きくなっています。
     
設定パターンの違いによる音圧レベル分布の比較。
左が全体をカバーするAパターン、右が中通路までをカバーするBパターン。
Bの方が後方座席で大きくレベルが下がっているのが分かる
 


 また、右の図はインパルスレスポンスと言って、音が測定マイクの位置に飛来して来た時の音の到達時間とそのエネルギーを表したものです。グラフは左から右に向かって時間の進行を表していますが、第1波面(最初の大きなパルス波形)以降の波の量を比較して、少ない方が残響音や残響感が少なくなる、言い換えれば少ない方が明瞭性が高まるということになります。

 測定を実施したホールは客席段床の角度が急で、後壁の面積も小さくその反射音の影響が少ない方でしたが、それでもポイントソースに比べてAパターン(全席カバー)、Bパターン(半席カバー)の順に反射音が減少しているのがよく分かります。これらのスピーカーは全く同じ位置で再生されています。また、実際の再生音でも測定のデータ通りに反射音が少なくなり明瞭性も向上していました。

 



ポイントソースと「Intellivox」の音の到達時間とそのエネルギーの比較。上からポイントソース、中央が「Intellivox」で全体をカバーするAパターン、下が「Intellivox」で中通路までをカバーするBパターン。上から順番に第1波面以降(Aの部分)のエネルギーが少 なくなっていく様子が分かる
   
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