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ライブハウスレポート/KYOTO MUSE (Vi3000)

ライブハウスレポート「KYOTO MUSE」Vi3000の実力はいかに!?

 京都の中心地、烏丸に1990年にオープンしたライブ・ハウス「KYOTO MUSE」。ジャンルの垣根無く様々なアーティストのライブが連日行われ、京都の若者たちの間では人気スポットになっている。
 その「KYOTO MUSE」が先頃、音響機器の更新を実施。長らく使われてきたアナログ・コンソールをリプレースする形で、英国「Soundcraft」社の最新鋭デジタル・コンソール「Vi3000」が導入された。昨春発表され、昨年7月から国内販売が開始された「Vi3000」は、DSPコアがサーフェースに内蔵されたスペース・ファクターに優れたデジタル・コンソールで、一体型ながら最大96chの入力信号の処理に対応。「Vi6」などの上位モデルで好評の“ビストニクス・タッチスクリーン”や、“フェーダーグロウ・システム”による操作性の良さも特徴で、いまライブ・シーンで注目を集めるデジタル・コンソールの一つだ。
  そこで本誌では、国内でいち早く「Vi3000」を導入した「KYOTO MUSE」を訪問し、取材を敢行。「KYOTO MUSE」の植島義勝氏と、その音響管理を手がける「ナックルポート」本社音響課 課長の甲斐総司氏に、「Vi3000」を選定した理由とその使い勝手について話を伺ってみることにした。(プロサウンド編集部)

「KYOTO MUSE」に導入された、Soundcraft「Vi3000」 
京都のライブ・ハウス「KYOTO MUSE」に新たに導入されたコンソール、Soundcraft「Vi3000」


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1990年4月、京都の中心地にオープンしたライブハウス「KYOTO MUSE]
——— はじめに「KYOTO MUSE」の沿革をおしえていただけますか。

植島 現在、“MUSE”の名前を冠したライブ・ハウスは大阪の心斎橋と京都の烏丸、そして大阪の江坂と関西圏に3件あるんですが、この「KYOTO MUSE」は心斎橋の「OSAKA MUSE」に続く形で、1990年4月にオープンしました。ですから今年の春でちょうどオープン25周年ということになります。

——— ビルの上階にありますが、専用の入り口が設けられていますね。

植島 このビルが建つときは既に「KYOTO MUSE」が入ることが決まっていたんです。ですから最初から建物自体、ライブ・ハウスありきの設計になっているんですよ。

——— 出演するアーティストの傾向はあるんですか?

植島 特に偏り無く、オール・ジャンルですね。ブッキングと箱貸しの割合は6:4くらいで、パーティーはやっていますが、深夜のクラブ営業はやっていません。定期的に「KYOTO MUSE」主催のイベントなども行っています。キャパは350人程度で、箱の鳴りはかなりデッドだと思うんですが、利用していただいているアーティストやお客さんからは音の評判が凄く良いですね。

「KYOTO MUSE」 
1990年4月にオープンした「KYOTO MUSE」。ビルの上階にありながら、十分な天井高を誇る。キャパは約350人とのこと

——— 音響機材の変遷をおしえてください。

甲斐 コンソールは最初は40ch入力の「ヤマハ PM3000」で、約10年前に「Soundcraft」社の「MH3」に入れ替えました。「MH3」は、40モノ・イン/4ステレオ・インという仕様のものですね。スピーカーに関しては、「Turbosound TMS-3」のセパレート・タイプのものを2つに分けて吊っていて、それを「Amcron」社のパワー・アンプでドライブしていたんですが、老朽化と交換ユニットの供給の問題から約7年前に「Nexo GEO S」に入れ替えました。「Nexo」は、「Amcron」社の「Macro-Tech 5002VZ」でドライブしています。

本体の入出力が充実したVi3000は、既存のアナログ・マルチ・ケーブルを活かすことができるデジタル・コンソール
——— そして先頃、コンソールを「Soundcraft」社の「Vi3000」に更新されたそうですね。

甲斐 はい。「MH3」に関しては凄く気に入っていたんですが、フェーダー・モジュールの調子が悪くなって修理の見積もりを出したら結構高かったんですよ。それだったら新しいコンソールに入れ替えた方がいいんじゃないかということになりました。また、「MH3」は40モノ・インという仕様で、インディー・バンドの場合はそれだけあれば十分なんですが、プロが出演する際に何度か足りなくなったことがあって、そこも何とかしたいなと思ったんです。


甲斐総司氏 
「KYOTO MUSE」の音響管理を手がける
「ナックルポート」本社音響課 課長の甲斐総司氏
植島義勝氏 
  「KYOTO MUSE」の植島義勝氏

——— 複数のコンソールを検討されたと思うんですが、最終的に「Vi3000」に決められた理由をおしえてください。

甲斐 4機種くらい検討したんですが、一番の理由は「Soundcraft」社のデジタル・コンソールの使い勝手に馴れていたからですね。弊社で管理を行っている他のライブ・ハウスで、「Vi6」や「Vi4」を導入しているところがあるので、「Vi3000」であれば使い方をゼロから覚えることなく操作できるだろうと。ですから、「Vi3000」は比較的新しい製品ではあるんですが、実際に触らずに導入を決めてしまいました。

 それともう1つ、「Vi3000」は本体のアナログ入出力が充実しているところも導入の決め手になりました。というのも、工事に日数を取れないなど様々な理由で、ステージからPAスペースまで敷いてあるアナログ・マルチ・ケーブルはそのまま活かしたかったんですよ。最近のデジタル・コンソールは、ステージ・ボックスとの組み合わせが前提で、本体のアナログ入出力は最低限に抑えられているものが多いですが、「Vi3000」は本体のアナログ入出力が非常に充実していた。アナログ・マルチ・ケーブルが活かせる仕様のデジタル・コンソールだったんです。ステージ・ボックスと本体をデジタルで繋ぐことができる点はデジタル・コンソールの大きな特徴ですが、ここのようなライブ・ハウスの中には既存のアナログ・マルチ・ケーブルを活用したいと考えているところも少なくないと思いますので、そういった現場には「Vi3000」は最適なコンソールだと思います。

PAブースは、客席左側後方に設けられている 
「KYOTO MUSE」のPAブースは、客席左側後方に設けられている

——— 工事が行われたのは?

甲斐 今年に入ってすぐ、1月の頭に「Vi3000」の導入を決めて、2月の半ばに入れ替えました。本当にコンソールの入れ替えだけで済んだので、作業は1日だけで終わり、翌日からすぐに営業を開始しましたね。

——— ではもう1ヶ月以上稼働させているわけですが、実際の使用感はいかがですか?

甲斐 まず、出音に関しては、アナログからデジタルに変わったわけですので当たり前なんですが、明らかに違う感じですね。クリアになって解像度が上がったというか。高域はさらっときれいに伸びているんですが、低域はしっかり締まっているんです。それとレンジが凄く広く感じる点も気に入っています。これまでも「KYOTO MUSE」は、音の良い箱として知られていたわけですが、「Vi3000」を導入したことによってさらに一段上のサウンドになった気がします。あとは筐体がコンパクトなので、PAブースのスペースに余裕ができたのも嬉しいですね(笑)。卓周りに小物を置いておけるようになりましたし、ブースが広く使えるようになって、作業効率が上がったような気がします。

2月に導入された「Vi3000」 
長らく使われてきたSoundcraft社の「MH3」をリプレースする形で、今年2月に導入された同じくSoundcraft社の「Vi3000」

——— 以前はアウトボードを使用されていたんですか?

甲斐 そうです。脇に大量のアウトボードを置いていたので、それがかなりスペースを喰っていたんですよ。今はコンプレッサー系のアウトボードは置いてないですし、一応乗り込みのオペレーターさん用にリバーブとディレイを残してあるくらいです。あとはロック系のバンドで、たまにボーカルを歪ませてほしいというリクエストがあるので、「ヤマハ」の「SPX」を2台残してあるくらいですね。それ以外はすべて「Vi3000」内蔵のエフェクトで事足りています。

——— 内蔵のエフェクトはいかがですか?

甲斐 「Lexicon PRO」製のプロセッサーが4系統入っていて、僕はそれをリバーブとディレイで使用しているんですが、自然なかかりで凄く良いですね。「SPX」のリバーブと比べるとさすがに上品なサウンドで、この箱はデッドなのでリバーブの使い方が難しかったりするんですけど、「Lexicon PRO」のエフェクトは空間にすんなり馴染んでくれます。また、チャンネル・コンプレッサーもナチュラルな感じでとても良いですね。それとすべてのバスに「BSS AUDIO」製の30バンド・グラフィックEQが入っているというのはありがたいです。

アウトボード類
「Vi3000」の導入によってほとんど撤去されたというアウトボード類だが、乗り込みのオペレーターのためにディレイやリバーブ類は残されている
——— 「Vi3000」の入出力端子は、用途に合わせてカスタマイズすることができますが、「KYOTO MUSE」さんではどのような構成にしていますか?

甲斐 「16マイク/ライン入力カード」が3枚と「16ライン出力カード」が1枚という構成で、48ch入力/16ch出力という仕様です。その他、拡張スロットに「8ライン入力カード」を2枚と「8ライン出力カード」を2枚追加しています。48chのマイク・インはすべてステージからの入力で使いたかったので、CDプレーヤーやアウトボードなどを接続するために拡張した感じですね。マイク・インが48chあれば、この規模のライブ・ハウスなら問題ありません。やはり、外部ボックスを使わずに、これだけの入出力を内蔵できるというのは「Vi3000」の大きな魅力だと思います。

「Vi3000」の入出力端子はカスタマイズできるが、「KYOTO MUSE」では3枚の「16マイク/ライン入力カード」(計48chマイク/ライン入力)と1枚の「16ライン出力カード」に加えて、拡張スロットに「8ライン入力カード」を2枚、 「8ライン出力カード」を2枚搭載している(合計48chマイク/ライン入力、16chライン入力、24chライン出力)
「Vi3000」の入出力端子はカスタマイズできるが、「KYOTO MUSE」では3枚の「16マイク/ライン入力カード」(計48chマイク/ライン入力)と1枚の「16ライン出力カード」に加えて、拡張スロットに「8ライン入力カード」を2枚、 「8ライン出力カード」を2枚搭載している(合計48chマイク/ライン入力、16chライン入力、24chライン出力)

——— 「Vi3000」のサーフェースの“ビクトロニクス・タッチスクリーン”や“フェーダーグロウ・システム”はとても高く評価されていますが、その使用感はいかがですか?

甲斐 凄く良いですね。何と言ってもストリップを上から順番に見たときに、チャンネルの状態が一目で分かるのがいい。EQやコンプ、ゲートのかかり具合やAUXの返しの量などが一目で分かるんです。本当に視認性は抜群ですね。タッチ・スクリーンのレスポンスも良い感じです。“フェーダーグロウ・システム”の機能によってフェーダー内部の色が変わるというのもいいですね。ユーザー・レイヤーを組み替えたときや、インプットとVCAを混在させたときも、間違えることなく操作することができます。


優れた操作性を誇る「Vi3000」。タッチ・スクリーンと16個のロータリー・エンコーダー/スイッチ類を一体化した革新的な“ビクトロニクス・タッチスクリーン”よって、直感的なオペレーションを実現している
優れた操作性を誇る「Vi3000」。
タッチ・スクリーンと16個のロータリー・エンコーダー/スイッチ類を
一体化した革新的な“ビクトロニクス・タッチスクリーン”よって、
直感的なオペレーションを実現している

「Vi3000」は、独自の“フェーダーグロウ・システム”を採用。フェーダーにアサインされている機能によって、内部の色が変わる設計になっている
「Vi3000」は、独自の“フェーダーグロウ・システム”を採用。
フェーダーにアサインされている機能によって、内部の色が
変わる設計になっている

——— 「Vi3000」は、iPad用アプリ「ViSi Remote」によって遠隔操作できますが、活用されていますか?

甲斐 「Vi6」や「Vi4」では使ったことがあるんですけど、ここではまだ使ったことがなくて、これから活用していきたいと思っています。PC用のオフライン・ソフトウェア「Virtual Vi」は頻繁に使っていますね。チャンネル名の入力などセッティングは本体でやった方が早いです。しかしライブハウスは仕込み時間もタイトで終演も遅いので、終わってから本体でデータを作る時間は限られます。乗り込みのオペレーターさんのデータを作るときに、空いてる時間等にセッティングを作り込んでおけるのがいいですね。そういう意味では、アナログ・コンソールのときよりも仕事が増えている気がしますが(笑)。

サーフェースにはUSB端子を装備。パソコンの「Virtual Vi」で作成したセットアップを簡単にコピーできる
サーフェースにはUSB端子を装備。パソコンの「Virtual Vi」で作成したセットアップを簡単にコピーできる

——— 乗り込みのオペレーターさんは「Vi3000」について何とおっしゃっていますか?

甲斐 とても好評です。最初にさらっと説明するだけで、あとは問題無くオペレートしてもらえる。「Vi3000」は、初見でも触りやすいコンソールかもしれませんね。

——— 本日はお忙しい中、ありがとうございました。


手慣れた様子で「Vi3000」をオペレートする甲斐氏 
手慣れた様子で「Vi3000」をオペレートする甲斐氏

KYOTO MUSE
〒600-8006
京都市下京区四条通柳馬場西入 ミューズ389京都
Tel:075-223-0389
URL: http://www.arm-live.com/muse/kyoto/
 

※この記事は「プロサウンド Vol.187 6月号(2015年5月18日)」から転載しています。

プロサウンドVol.187隔月刊プロサウンド Vol.187 ※別サイトに移動します。
 


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