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ライブハウスレポート/名古屋CLUB QUATTRO(Vi5000,Vi7000)


 中京地区屈指の繁華街、栄に1989年6月にオープンした「名古屋CLUB QUATTRO」。メジャーからインディー、外タレ、最近ではアイドルに至るまで、様々なアーティストのライブ/イベントが行われている老舗ライブ・ハウスだ。そんな「名古屋CLUB QUATTRO」は昨年9月、ハウス/モニター両方のコンソールを更新。長らく使われてきたアナログ・コンソールをリプレースする形で、英国の名門「Soundcraft」社の「Vi7000」と「Vi5000」を導入した。昨年発売されたばかりの「Vi7000」と「Vi5000」は、この「名古屋CLUB QUATTRO」が日本では初めての導入事例となる。人気の「Vi」シリーズの最新鋭機「Vi7000/Vi5000」では、世界中のオペレーターから賞賛されている音質と操作感がどのように進化したのか、「名古屋CLUB QUATTRO」にお邪魔して担当者に話を訊いてみることにした。対応していただいたのは、「名古屋CLUB QUATTRO」でオペレーターと音響管理を担当する富永充氏である。

1989年6月にオープンした老舗ライブ・ハウス「名古屋CLUB QUATTRO」。名古屋パルコ東館8Fにある

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——— はじめに「名古屋CLUB QUATTRO」さんの沿革からおしえていただけますか。

富永 「CLUB QUATTRO」は、株式会社パルコが運営するライブ・ハウスで、この「名古屋CLUB QUATTRO」は1989年6月、「渋谷CLUB QUATTRO」に次ぐ2番目の小屋としてオープンしました。最初から場所はここ(名古屋パルコ東館8階)で、ステージや客席、PAブースのレイアウトや内装などはオープン時からほとんど変わっていません。不定期に機材周りをアップデートしているくらいです。音響を手がけるスタッフは2人在籍していて、ぼくは主にモニターを担当していますね。

——— 中堅規模のライブ・ハウスとして、何か特徴はありますか?

富永 音響機材は、同規模のライブ・ハウスと比べるとグレードの高いものが入っているんじゃないかと思います。あとはメンテナンスもできるだけ細かくやっていて、機材はとても良いコンディションが維持できているのではないかと自負しています。

——— 行われるライブ/イベントはほとんどブッキングですか?

富永 そうですね。稀にレンタルもありますが、制作さんが間に入ったブッキングがほとんどですね。出演するアーティストさんやイベントの種類は本当にいろいろです。最近ではアイドルのイベントで使われることもありますし、もちろん外タレのコンサートも行われていますし、事務所が売り出し中の新人のライブもよくありますし……。特定のジャンルに偏ることなく、本当にいろいろなタイプのライブ/イベントで使用していただいています。

——— 機材の変遷について簡単におしえてください。

富永 コンソールに関しては、オープン時はハウスが「ヤマハ PM3000」、モニターが「ATL」という組み合わせで、数年後にモニターの方を「ヤマハ PM4000M」に入れ替えました。しばらくしてハウスの「PM3000」を48ch入力の「Midas Heritage 2000」に入れ替え、昨年9月までは「Heritage 2000」と「PM4000M」という組み合わせで営業していました。一方、スピーカーは最初が「EV MT-4」で、現在は10年くらい前に導入した「L-Acoustics ARCS」を使用しています。

——— コンソールはオープンから昨年まで約26年間、アナログだったわけですね。アナログ・コンソールにはこだわりがあったのですか?

富永 はい、ありました。ぼくらがアナログのサウンドが好みだったというのもありますが、よく出演していただくアーティストさんからもそのサウンドが評価されていましたしね。“名古屋のQUATTROは音が良い”と。「Heritage 2000」を導入した7〜8年前も、既に各社からデジタル・コンソールが発売されていて、業者からはそちらを勧められたりもしたんですが、あえてアナログ・コンソールを選定したんです。また、ぼくを含めメンテナンスできるスタッフがいたからアナログ・コンソールを使い続けることができたというのもありますね。パーツさえあれば自分たちで修理することができたので、メンテナンスという点でも特に心配は要らなかったんです。

——— 昨年9月、ハウスとモニターの両方のコンソールを入れ替えられたそうですね。

富永 そうです。ハウスの「Heritage 2000」を「Soundcraft」の「Vi7000」に、モニターの「PM4000M」を同じ「Soundcraft」の「Vi5000」に入れ替えました。オープン27年目にして初のデジタル・コンソールですね。

——— 今回の機材更新のきっかけは何だったのですか?

富永 一番のきっかけは「Heritage 2000」の保守パーツが無くなってしまったことです。2〜3年前からそんな話が出始めて、そろそろ入れ替えを検討しなければならないだろうと。そして1年くらい前にもう限界だろうということで新しいコンソールの選定を開始し、「Soundcraft」の「Vi7000」と「Vi5000」の導入を決めたというわけです。

昨年9月にハウス・コンソールとして導入された「Soundcraft」の「Vi7000」。
32本のチャンネル・フェーダーを備え、最大128chの信号を処理できる「Vi」シリーズの最新鋭機だ

——— ライブ用デジタル・コンソールは各社が力を入れていて、市場には多くの製品が出回っているわけですが、その中から「Soundcraft」の「Vi7000/Vi5000」を選定した理由をおしえてください。

富永 一番の理由は、梅田のQUATTROで「Vi6」を導入しているからですね。名古屋と梅田の両方で行われるクラブ・ツアーも多いですし、同じメーカーのコンソールの方が乗り込みのオペレーターさんもやりやすいのではないかと。ですから最初は「Vi6/Vi4」の導入を検討していたんですが、しばらくして「Vi7000/Vi5000」が発表されることを知り、「Vi6/Vi4」とのショーデータの互換性もあるということで導入を決めました。

——— ハウスに32チャンネル・フェーダーの「Vi7000」、モニターに24チャンネル・フェーダーの「Vi5000」を選定されたのは?

富永 「Vi7000」と「Vi5000」の違いはチャンネル・フェーダーの数だけなので、単純に設置スペースで決めました。

——— 「Vi7000」と「Vi5000」は、サーフェースと心臓部となる「Local Rack」、ステージ側での入出力を担う「Standard Stage Box」、サーフェース周辺での入出力を担う「Active Breakout Box」という4つのコンポーネントで構成されますが、どのように配置していますか? また「Local Rack」には追加のカードなどは装着していますか?

富永 ハウスの「Vi7000」用の「Local Rack」と「Active Breakout Box」は、PAブースのサーフェースの下に設置し、CAT5ケーブルで接続した「Standard Stage Box」はステージ袖に設置しています。「Active Breakout Box」にはアウトボードや各種プレーヤー類を接続できるようにしてありますね。一方、モニターの「Vi5000」用のコンポーネントはすべて、サーフェースと共にステージ袖に設置しています。音声回線は、これまで使用してきたアナログ・マルチを活用し、それぞれの「Standard Stage Box」に頭分けで入力していますね。「Local Rack」には特にカードは追加しておらず、標準装備のままです。

——— ハウスとモニター、同じ「Vi」シリーズが導入されたわけですが、デジタルでネットワークを構築するプランはありませんでしたか?

富永 両者をデジタルで接続するメリットはあまりないと思ったので、とりあえず頭分けにしました。「Standard Stage Box」を共有するネットワーク・システムも構築できると思うのですが、そうするとゲイン設定も共有することになってしまいますからね。しかし「Vi7000/Vi5000」は、オプション・カードを装着することによってあらゆるオーディオ伝送規格に対応できるコンソールですから、将来的にはネットワーク・システムを構築する可能性もあると思います。

——— PAブースにはかなりアウトボードがありますね。

富永 いや、これでも「Vi7000」の導入によってごそっと減ったんです。以前はコンソールの後ろに「dbx 160X」や「dbx 1066」といったコンプレッサー類が20ch分以上、ゲートも16ch分以上ありましたから。本当はもっとすっきりさせてもいいんでしょうけど、一部アウトボードを残してあるのは乗り込みのオペレーターさんのためです。やはり空間系など基本的なものはアウトボードであった方がいいでしょうから。

 「名古屋CLUB QUATTRO」でオペレートと音響管理を手がける富永充氏

 PAブースのサーフェース下に設置された
「Vi7000」用の「Local Rack」(後方から見たところ)

 
 PAブースのサーフェース下に設置された「Vi7000」用の「Active Breakout Box」。アウトボードや各種プレーヤー類が接続されている
 

——— 昨年9月に「Vi5000/Vi7000」を導入されて、約半年現場で使用されてきたわけですが、その使い心地はいかがですか?

富永 正直、初めてのデジタル・コンソールということで構えていた部分もあるんですけど、操作性が想像以上にアナログ・ライクだったので、スムースに入ることができました。「Vi5000/Vi7000」は、フェーダーとタッチ・スクリーン、エンコーダーが分断されていないので、本当にアナログ・コンソールのような感覚で操作することができるんです。乗り込みのオペレーターさんも、「Vi7000/Vi5000」を触るのは初めてという人がほとんどだと思うんですけど、皆さんすぐに使いこなしていますね。

「アナログ・コンソールのような操作感が気に入っている」と語る富永氏。乗り込みのオペレーターも問題なく使いこなしているそうだ

——— 「Vi」シリーズは、タッチ・スクリーンの中にエンコーダーが備わり、その機能によって表示のグラフィックが変化する“ビストニクス”というユーザー・インターフェースが大きな特徴です。

富永 チャンネルを選択すると、EQやダイナミクスなどのパラメーターがすべて操作できるようになるので、とても使いやすいです。あとはタッチ・スクリーンの中のエンコーダーだけでなく、フェーダーの上のエンコーダーでゲインを操作できるのもいいですね。現場では最初にゲインを一番触るので。もちろんミックス時はパンに切り替えることもできます。

——— フェーダーの機能によって溝の色が変化する“フェーダーグロウ・システム”も「Soundcraft」ならではのものです。

富永 おもしろいなと思いますね。「Vi5000/Vi7000」では内蔵のグラフィック・イコライザーをフェーダーで操作できるんですが、そのときは溝が赤色に光るんですよ。溝と言ってもかなり鮮やかに光るので、操作ミスの防止にもなっているんじゃないかと思います。

——— 肝心のサウンドはいかがですか?

富永 前がアナログ・コンソールだったので、ローの押し出し感は当然変わったんですが、低域が無くなったというわけではなく、以前よりもさらに低い帯域がドンと出るようになったというか。そのあたりの変化はとてもおもしろいなと感じています。また、これも当然ですが、S/Nや高域の伸びは圧倒的に良くなりましたね。

——— ミックスしていていかがですか?

富永 ちょっとした操作が出音に反映されるので、すごくミックスしやすくなりました。デジタルなので、すべてが数値で正確に表示されるじゃないですか。今まで3kHzだと思っていたポイントが実際には違ったということにも驚きましたね(笑)。本当は2.8kHzくらいだったとか。

——— 内蔵エフェクトに関しては?

富永 すべてのチャンネルでコンプレッサー/ゲートが使えるのは最初衝撃でした(笑)。チャンネル標準のダイナミクスは過激に使うこともできる一方、アナログ機器のように曖昧にかけることもできるので、すごく気に入ってますね。

ステージ軸に設置されたモニター用の「Vi5000」。
「Vi7000]と同時に導入された

——— 「Vi7000/Vi5000」には、「BSS AUDIO」や「Lexicon PRO」製のエフェクトが標準で備わっています。

富永 「BSS AUDIO」の4バンド・パラメトリック・ダイナミック・イコライザー「DPR-901 II」は良いですね。狙った帯域だけをコンプレッションできるので、チャンネル標準のEQ/ダイナミクスに付け加える感じで、ちょこちょこ活用しています。これが最大16個インサートできるのだから凄いですよね。あとは「Lexicon PRO」のデジタル・エフェクトが最大8系統、AUXで使えるのでミックスがラクになりました。これまでは使える空間系のアウトボードには限りがありましたからね。プリセットはたくさん入っているんですが、ぼくはリバーブの“Small Hall”と“Vocal Plate”が好きで多用しています。音は正真正銘の“Lexiconサウンド”だと思いますよ。それと出力バスで使える「BSS AUDIO」の30バンド・グラフィック・イコライザー「FCS-960」も重宝しています。操作はフェーダーで行えますし、グラフィック・イコライザーなのにQの幅を可変できるんですよ。

 
「BSS AUDIO」の4バンド・パラメトリック・ダイナミック・イコライザー「DPR-901Ⅱ」の操作画面。
「Vi」シリーズならではの“ビストニクス”によって、本物以上の操作感を実現している

——— その他、何か気に入っている機能はありますか?

富永 ユーザーレイヤーを5個保存できるのはありがたいですね。イベントだと乗り込みのオペレーターさんが何人か入れ替わったりするので、ユーザーレイヤーを活用すれば、音切れなく設定を切り替えることができますから。

——— これまで使ってこられたアナログ・コンソールにはこだわりがあったようですが、「Vi7000/Vi5000」はそんな富永さんも納得のデジタル・コンソールであると。

富永 そうですね。フェーダーの感触もかなりアナログに近かったりするんですよ。おそらくメーカー側もアナログに似せて設計しているんじゃないかと思います。ブロックごとにディスプレイが備わっているので視認性も良く、デジタル・コンソールでありがちな操作で迷子になるということもまずないと思いますね。各種設定はパソコンを使ってできるんですが、ほとんど本体側でやってしまっています。外観もお洒落ですし、とても気に入っていますね。


サーフェースの左側に積まれたラック。
「Vi5000」用の「Active Breakout Box」と「Standard Stage Box」だけでなく、ハウスの「Vi7000」用の「Standard Stage Box」も一緒に置かれている

名古屋CLUB QUATTRO
愛知県名古屋市中区栄3-29-1
名古屋パルコ東館8F
Tel:052-264-8211
URL: http://www.club-quattro.com/nagoya/
 

※この記事は「プロサウンド Vol.192 4月号(2016年3月18日)」から転載しています。

 隔月刊プロサウンド Vol.192 ※別サイトに移動します。

 


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