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「Si Compact」製品レビュー 前編

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 昨年発売されたSoundcraft社の小型デジタル・ミキシング・コンソール「Si Compact」のファームウェアが、このほどバージョンアップされたのに伴い手にする機会を得た。
 
 Soundcraft社の卓とは初期の機種「Series800」の時代からアナログ卓では手にする機会が多かった。「Series200B」あるいは「Delta」は私の携わる演劇や舞踊のフィールドでのスタンダードな卓として愛用していた。その後のデジタル化では、Soundcraft製品として、ハイエンド機とその系列機種を目にしてきたが、小規模SRや演劇、舞踊で使用する機種が紹介されてこなかった。そこに登場したのが本機である。

Si Compact本体 Si Compact 24

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レビュアー 市来氏

市来邦比古氏

舞台音響家。1970年代より演劇舞踊の音響デザイナー、オペレーターとして数多くの舞台作品創造に加わる。近年では串田和美演出作品『十二夜』、『空中キャバレー』、永井愛作演出作品『シングルマザーズ』、坂東玉三郎八千代座特別舞踊公演『春夏秋冬』等がある。世田谷パブリックシアターをはじめ、可児市文化創造センター、北九州芸術劇場、まつもと市民芸術館等の音響設備設計に関わる。日本舞台音響協会副理事長、尚美学園大学・多摩美術大学等非常勤講師、(公社)劇場空間技術協会会員、(社)日本演劇協会会員、(公財)せたがや文化財団非常勤職員、1級舞台機構調整技能士(音響機構調整)

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デジタルSR卓に求められること

 デジタルSR卓のミックス作業においては、信号のルーティングをどう行なうか、分かりやすいか、操作しやすいかが第1のポイントである。ここにはルーティングをまとめ、あるいは遮断するグループ機能やミュート機能が含まれる。次に、各インプット、アウトプット、ミックスチャンネルのパラメーターが同一の方法で操作できるか否か、その方法が分かりやすいか、操作しやすいかが第2のポイントである。第3のポイントとして、操作した結果を記憶させ、再生する作業をどう行なうか、分かりやすいか、操作しやすいかである。

 デジタルSR卓の評価は、このミックス作業の操作性のポイントと、音響機器の根本である音の善し悪し、また外部機器を含めた拡張性がどれだけあるかが採用の大きな判断基準になるだろうと私は考える。音楽ミックスと効果音再生双方で使いやすいことが求められ、そして当然ながら価格が手頃であるのはもちろんである。

 音楽SRと、効果音(音楽を含む)再生とでは使い方が異なる。音楽SRで使う場合、楽器やヴォーカルに立てたマイクやDI、ミュージシャンのサブ卓からのラインソースをインプットコネクターに接続し、ソースを種別などでグループ化してミックスしメインの出力(ハウス)となるステレオアウトから送り出す。必要に応じて各チャンネルのパラメーターを操作する。また必要に応じてエフェクトを各チャンネルに付加する。記憶機能では、楽曲毎の記憶(シーン)チェンジが素早く、分かりやすく、間違いが起きないことも求められる。

 効果音再生では複数の音源再生機器や、複数音源として機能するパソコンからのラインソースを、多チャンネルの入力に割り当て、時間軸の異なるキッカケで音量やエフェクト操作をして、多チャンネルの出力に振り分けて、各音源を異なる音像定位で再生するのが基本作業だ。この場合、AUX回路をポストフェーダーで使用し、そのレベル設定を如何に速く、分かりやすく行なえるかが求められる。記憶機能は多用するので音楽ミックス以上に機能の充実が必要だ。以上の観点からSi Compactをみてみよう。

Si Compact 24の仕様
 幅71.7㎝、奥行き51㎝、重量15.5kg。卓と言うのにふさわしい適度な大きさ、両手で持つと見た目よりずっと軽い。スマートフォンによく使われている4.3インチ液晶タッチディスプレイが右上に配置されている。チャンネルネームの入力やバス回路のプリ・ポスト切り替え、入出力のパッチ、チャンネルのステレオリンク、フェーダーアサインの移動などを含め様々な機能が凝縮されている。

ディスプレイ画面
ディスプレイ画面
接続
 まずインプットをつなぐ。XLRコネクターが整然と並ぶI/O接続部、そこに現場をシミュレートして入出力を接続してみる。マイク入力としてインプットのch1とch2にステージ用マイク2本を接続、ch3にトークバックマイクを接続する。再生系としてパソコンにRME Fireface UCを使用し、そのアウトを8チャンネル、アナログでch5からch12までのインプットへ接続する。もう1台パソコンをインターフェイスを介してch15とch16へ接続する。

 次にアウトプットをつなぐ。今回はステレオ出力(15番16番コネクター)をメイン用として、スタジオミキサーSoundcraftのLM-1を通してスタジオモニターへ接続。効果音再生のシミュレーションを行なうため、リアスピーカーをバス3と4から接続。FBやステージスピーカーを模して小型スピーカーを2台配置し、バス1と2で駆動。計6系統の出力とする。

Si Compact 24のリア
Si Compact 24のリア:拡張スロットを装備しており、MADI、AES/EBUなどのオプションカードが接続できる


チャンネルストリップ
 各パラメーターはACS(AssignableChannel Strip)という名称の操作面で操作する。インプットやアウトプットのバス、マトリックス(MTX)、ステレオ・アウトチャンネル、モノ・アウトチャンネルのパラメーターは、フェーダーの上にあるSELスイッチですぐにACSに呼び出し可能だ。チャンネル・レベルメーター、ファンタム電源のスイッチ、ゲイントリム、フェイズ切り替え、ハイパスフィルターの周波数可変トリムがある入力セクション、ゲートセクション、コンプレッサーセクション、イコライザーセクション、チャンネルディレイとパンあるいはステレオのバランスコントロールとステレオ出力やモノ出力へのアサインを決定する出力セクションが一目で分かるよう配置されている。

ACS
ACS (Assignable Channel Strip) 
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