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「Si Compact」製品レビュー 後編

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音楽SRのミキシング  

 フェーダーレイヤーでバス・マスターフェーダー面にして、バスの1、2、3、4をミュージシャンへのFB AUXとしてプリフェーダー設定にする。チャンネルのSELスイッチを押し、ディスプレイのアウトプットでバスのセットアップ画面を呼び出し、プリ/ポストを切り替える。文字で書くと作業が面倒なようだが、デジタル卓では必ず伴う作業なのですぐに慣れるだろう。同様にバス7から14をポスト設定にしてグループチャンネルとして使用できるようにする。ついでチャンネルストリップの出力セクションでL/RスイッチをONにしてステレオ出力にアサインする。これでグループマスターが設定できた。

 フェーダーレイヤー・スイッチでIN Aに戻り、TOTEM機能を使ってインプットからバス送りを設定する。このときグループ系は規定(0dB)に設定、AUX系はFBチューニングあるいはサウンドチェックで決定する。このとき出力系すべてにGEQが利用できるのはありがたい。FXリターンはIN Bのステレオ・インプットフェーダーに割り当ててあるので規定に設定する。これでTOTEM機能を使ってインプットからFX送りを利用できる。Lexicon文字の記してあるセクションのLEXスイッチでFXモードを選択設定できる。これで音楽SRのセッティングが終了。あとの操作はアナログ卓で行なうミキシング作業と同様である。


実際の演劇に近いミキシング  

 TOTEM機能を使用してより複雑な演劇の現場に近いミキシングを試みてみよう。マイク1番はステレオL/Rのみ、マイク2番はステレオL/Rとリバーブ成分をリアから出してみる。IN BにあるFXリターンフェーダーをIN Aに移動させて操作性を向上させるため、FXリターンフェーダー1と2をフェーダーチャンネルの21と22に割り付ける。ch21のSELを押し、ディスプレイをFader Setup画面にして、ch21のAssign Stereo InputをLexiconがパッチされているST1に変更する。チャンネルフェーダーへの割り当て機能はアップデートにより追加された機能の一つだ。次にリアがつながっているバス3のSELを押し、ディスプレイをアウトプット画面にしてBus WidthをStereoにすると、リアの2台のスピーカーはステレオリンク状態になる。リバーブのステレオを送り込むための操作だ。21番にあるFXリターンをバスの3、4へ送るのはマイクと同様の手順で行なう。

 再生機の接続は再生チャンネル一つずつからアサインしていく。再生ソフトはAbleton社の『Live』で、RME FirefaceUCのアナログアウトch1から8までを『Live』のアウトチャンネルに割り当てる。ch1と2はステレオで音楽再生用、ch3と4は効果音のステレオ用、ch5から8までは単独の効果音用として、音の再生順に一つずつ定位を決めていく。ここの操作もマイクのときと同様だ。音を聴きながらでも、取り敢えずの仮決めでも、個々のスピーカーから出る音を何にするかというプランをもとにアサインしていく。作業を始める前は手こずるかなと思えたが、実際に行なうと、意外とスムーズに進めることができた。『Live』と卓のチャンネルアサインの組み合わせで手詰まりになるときは、卓のCue Listスイッチを押しディスプレイをCue List画面にして、Storeを押す。新しいCueが作られリストに加えられるので、NextスイッチでCueを送っていく。

 また、Cue ListをShowとしてUSBスティックに記憶させ、『Virtual Si』という編集ソフトをダウンロードしてオフライン編集することも可能だ。


アナログ感覚の操作性
 入力から出力までのアサインやレベル設定、またチャンネルストリップの操作性は画面上のトリマーをロータリーエンコーダーなどで数値を見ながら操作するというより、直感性を重視し、アナログ感覚での操作が基本となっている。ここで言うアナログ感覚というのは文字通り身体的な意味であり、アナログ卓の操作を模しているという意味ではないことに注目したい。Soundcraftのミキシングコンソール開発のエッセンスが詰まっていると言えるだろう。
 チャンネルストリップの操作では、ディスプレイ上にエンコーダー画面とパラメーターの数値が表示されるフォーカス機能を持ち、データの厳密性や再現性を求める操作に対応している。
 また、作業のところで言及しなかったが、大概のパラメーターをチャンネル間でディスプレイのクリップボードを介してコピー・ペーストが可能だ。これもアップデートで可能となった機能である。

コピー・ペースト機能
コピー・ペースト機能も追加された
これからのコンソール

  以上現場での使用を目的にSi Compact24を操作してみた。
 音楽ミックスで使用するのはグループやAUXとしてバスをプリやポストどちらに設定するのも簡単で、たとえば8グループ、6AUX、4FXと考えるとワンランク上の出力数を持った卓であることが分かる。またFXリターンも含めると40チャンネルもの入力を備え、使い出が充分にある。また拡張オプションカードにMADIやA-NET(近日発売)、Cobra NET(近日発売)などが用意され、ステージボックスの利用などでI/Oコネクターの拡張が可能だ。音のクオリティも高く、複雑なデータ確認を必要としない小規模な音楽ライブ、あるいは小規模なライブハウス、劇場ホールでの舞踊公演で使う卓には最適な機種の一つに挙げられる。稽古場に設置する卓として、一回り小型のインチラック幅であるSi Compact16は最も優れている機種の一つだろう。

Si Compact 16
Si Compact 16 - ラックマウント金具を備えており、EIA 13Uのスペースにラックマウントができる
 一方演劇における効果音や音楽再生の場合、MTXを象徴するようなアサインが複雑になった際、アサインの全体像が確認しにくいのが手間である。設定はSRと同様非常に簡単だが、その結果をディスプレイで確認できればより使いやすいと感じた。一度設定すれば操作は簡単なので、複雑なアサインのルーティング確認を必要としない場合は、音楽ミックスと効果音再生を1台で行なえる卓として手元に置きたい機種である。またインプットチャンネルにディレイが挿入できるので、声などの自然な定位感が容易に得られる。これは高品位な音楽SRでのハウリング対策、位相干渉対策などの観点からも非常に効果的だ。これからのデジタルコンソールとして、期待が持てる1台である。
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※この記事は「プロサウンド Vol.169 6月号(2012年5月18日)」から転載しています。

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